野菜や果物や魚と同様に、この業界に身を置くクリエイターにも、食べごろの「旬」がある気がしてなりません。
収穫からいたずらに時間の経った食材は、やがて色褪せ、腐り、持ち主の手によっていとも簡単に捨てられます。
いくら新鮮で美味しい旬な食べ物でも、手を加えることなく、そのままの状態で放置してしまえば、「賞味期限」も「消費期限」も切れてしまいます。
2023年11月9日に法人登記した㈱匙デザインカンパニーの初期メンバーは、社会人になっておよそ15年が経った同世代のコピーライター(橋田:1986生)/デザイナー(飯澤:1985生)/カメラマン(日髙:1986生)の3人です。
あと数年で40歳になる、気心と得意不得意を知れたメンツで、「この先もいい歳の取り方をしたいものだね」などとほざきながら、新しい会社をつくりました。
創業からの「ちょうど半年」を振り返る時、ご縁ある方々からの温かい応援、親心ある方々からの有り難い支援によって、様々な案件のクリエイティブを担わせていただくことができました。
ただただ、「いつもいつもすみません」「本当にありがとうございます」と、心の声が勝手に漏れ出すほど、感謝の連続の日々を過ごしています。
ここで、最初の話。
とんでもない体感速度で迎えることのできた「創業半年」とは、会社にとっての“採れたてみずみずしい「旬」の季節”に過ぎないと思うのです。
また、残業・休日出勤上等、年功序列当たり前の考えを持ちながら、なんだかんだ各々の得意と感性を伸ばしてきた我々の「旬」は、足腰も脳みそも元気で白髪もシワもごく僅かな今なのかもしれません。
会社も個人も、間違いなく歳をとります。
もし、会社も個人も食べごろの「旬」が今なのだとしたら、いたずらに時間が過ぎた先には、色褪せ、腐り、捨てられる運命…。
年月の経過に抗うことはできないからこそ、素材勝負の生モノとして存在し続けるには限界があることでしょう。
美味しいと思ってもらえる「賞味期限」と、使いものになる「消費期限」を延ばすためには、素材そのものに手を加え、味を足し、煮詰め続けることが欠かせません。
先々、年季が入るほど価値が上がるウイスキーや葡萄酒や仏像になど、なれるとも思っていません。
私たち匙デザインカンパニーは、せめて、防腐剤まみれの「いちごジャム」になりたい。
ゴミ箱へ捨てられるまでに使い切れる容量と、甘ったるい味でベッタリこびりつく脇役として、いつでも瓶の中で出番を待つ存在でいたい。
出番が来たなら、スプーンですくって思う存分塗りたくってもらえる食卓の友であり続けたい。
創業から半年。せっかくつくった組織が、上手に歳をとっていくために感じたことをしたためました。
奢らず、腐らず、欲張らず、誰かの「満足」をアシストする存在を目指して、クリエイター集団としての「一語一絵」を大切に歩みを進めます。
〈文:橋田 耕介〉