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【噺】会社創業から半年を振り返って

2024/05/09
  • #随筆
【噺】会社創業から半年を振り返って

野菜や果物や魚と同様に、この業界に身を置くクリエイターにも、食べごろの「旬」がある気がしてなりません。
収穫からいたずらに時間の経った食材は、やがて色褪せ、腐り、持ち主の手によっていとも簡単に捨てられます。
いくら新鮮で美味しい旬な食べ物でも、手を加えることなく、そのままの状態で放置してしまえば、「賞味期限」も「消費期限」も切れてしまいます。

2023年11月9日に法人登記した㈱匙デザインカンパニーの初期メンバーは、社会人になっておよそ15年が経った同世代のコピーライター(橋田:1986生)/デザイナー(飯澤:1985生)/カメラマン(日髙:1986生)の3人です。
あと数年で40歳になる、気心と得意不得意を知れたメンツで、「この先もいい歳の取り方をしたいものだね」などとほざきながら、新しい会社をつくりました。

創業からの「ちょうど半年」を振り返る時、ご縁ある方々からの温かい応援、親心ある方々からの有り難い支援によって、様々な案件のクリエイティブを担わせていただくことができました。
ただただ、「いつもいつもすみません」「本当にありがとうございます」と、心の声が勝手に漏れ出すほど、感謝の連続の日々を過ごしています。

ここで、最初の話。
とんでもない体感速度で迎えることのできた「創業半年」とは、会社にとっての“採れたてみずみずしい「旬」の季節”に過ぎないと思うのです。
また、残業・休日出勤上等、年功序列当たり前の考えを持ちながら、なんだかんだ各々の得意と感性を伸ばしてきた我々の「旬」は、足腰も脳みそも元気で白髪もシワもごく僅かな今なのかもしれません。

会社も個人も、間違いなく歳をとります。
もし、会社も個人も食べごろの「旬」が今なのだとしたら、いたずらに時間が過ぎた先には、色褪せ、腐り、捨てられる運命…。
年月の経過に抗うことはできないからこそ、素材勝負の生モノとして存在し続けるには限界があることでしょう。
美味しいと思ってもらえる「賞味期限」と、使いものになる「消費期限」を延ばすためには、素材そのものに手を加え、味を足し、煮詰め続けることが欠かせません。

先々、年季が入るほど価値が上がるウイスキーや葡萄酒や仏像になど、なれるとも思っていません。
私たち匙デザインカンパニーは、せめて、防腐剤まみれの「いちごジャム」になりたい。
ゴミ箱へ捨てられるまでに使い切れる容量と、甘ったるい味でベッタリこびりつく脇役として、いつでも瓶の中で出番を待つ存在でいたい。
出番が来たなら、スプーンですくって思う存分塗りたくってもらえる食卓の友であり続けたい。

創業から半年。せっかくつくった組織が、上手に歳をとっていくために感じたことをしたためました。
奢らず、腐らず、欲張らず、誰かの「満足」をアシストする存在を目指して、クリエイター集団としての「一語一絵」を大切に歩みを進めます。

〈文:橋田 耕介〉

“この世界に真っ赤なJAMを塗って食べようとするやつがいても”、「一語一会」にこだわることを誓います。

社名縁起匙デザインカンパニー誕生余話

高度経済成長期の只中、過重労働に嫌気が差し、若くして独立の道を選び、遠くロサンゼルス郊外へ移り住み、たった一人で数々の広告デザインを世に送り出してきた男がいた。

知る人ぞ知る、その人の名は、匙翔平(さじ しょうへい)。その当時、LAで「SHOHEI」と呼ばれる日本人は、ドジャースの大谷翔平よりも断然、デザイナーの匙翔平だった。

彼もまた、二刀流の先駆けとして、デザイナーと料理人の「二足のわらじ」を履いていた。自宅兼オフィスで屋外看板のデザインを手掛ける時も、足の踏み場もない厨房で1貫の寿司を握る時も、細部にまでこだわることから逃げない、そんな職人気質の人だった。

「これはもう、昔っからの癖だから」が口癖。デザイン提出の期限が迫っていても、一度に10人を超える予約を受けてしまった時も、自分のペースを崩さず細部にまでこだわりを持つことが、彼の生き様だった。

時は流れ2023年。齢70を越えた匙さんは、一流デザイナーの肩書きを捨て去り、寿司屋一本で勝負することを決断する。「眼精疲労」云々が表向きの理由と聞くが、日々移り変わる生モノと対話できる寿司の世界に、本当の“生き甲斐”と“旨味”を見つけたらしい。

だいぶ前から、「大谷翔平はいずれドジャースのユニフォームを着るよ」と予言していたらしく、お店の名前もかつての『SPOON(スプーン)』から『SUSHI KAPPO SHOHEI(寿司割烹 翔平)』に変え、ドジャースタジアムの目と鼻の先に青の暖簾をかけている。

その先見の目は、“21世紀の諸葛亮孔明”と囃し立てられ、寿司屋を訪れる人はもちろん、繁盛をやっかむ人から「寿司ネタ」以上の「話のネタ」にされているとのこと。したたかさとは何かを突き詰めた男の決断に、スタンディングオベーションを送りたい。

さて、前置きが長くなりました。私たちは、そんな匙翔平さんに心底「憧れ」を抱き、片方脱ぎ捨てた広告デザインの分野における“匙イズム”を受け継ごうと心に決め、会社名を『匙デザインカンパニー』としました。

遠くLAでひたすらに寿司を握る匙さんへの敬意と感謝の思いを込めて、私たちは、あなたが元来得意としていた「自由な発想」で「温かみのある」広告デザインを、ご機嫌斜めな世の中へ送り続けます。

この物語はすべてフィクションです。調子に乗った架空の話です。最後までお読みいただき恐悦至極に存じます。

会社名
『匙デザインカンパニー』の由来は
  • 漫才コンビみたいな「漢字とカタカナ」の組み合わせがいいね
  • どんな「サービス」を提供する会社か分かったほうがいいね
  • 3人だけなのに「カンパニー」と言いはるのも馬鹿げていていいね
  • 愛称が「匙さん」や「サジカンさん」になるのもいいね

という創設メンバー3人の会話から生まれた、意味よりも勢い重視の社名です。登場人物の「匙翔平さん」は存在しませんので、ネット検索などはお控えください。

文:橋田 耕介 | 
認:飯澤 雄司・日髙 政博