社名縁起匙デザインカンパニー誕生余話

高度経済成長期の只中、過重労働に嫌気が差し、若くして独立の道を選び、遠くロサンゼルス郊外へ移り住み、たった一人で数々の広告デザインを世に送り出してきた男がいた。

知る人ぞ知る、その人の名は、匙翔平(さじ しょうへい)。その当時、LAで「SHOHEI」と呼ばれる日本人は、ドジャースの大谷翔平よりも断然、デザイナーの匙翔平だった。

彼もまた、二刀流の先駆けとして、デザイナーと料理人の「二足のわらじ」を履いていた。自宅兼オフィスで屋外看板のデザインを手掛ける時も、足の踏み場もない厨房で1貫の寿司を握る時も、細部にまでこだわることから逃げない、そんな職人気質の人だった。

「これはもう、昔っからの癖だから」が口癖。デザイン提出の期限が迫っていても、一度に10人を超える予約を受けてしまった時も、自分のペースを崩さず細部にまでこだわりを持つことが、彼の生き様だった。

時は流れ2023年。齢70を越えた匙さんは、一流デザイナーの肩書きを捨て去り、寿司屋一本で勝負することを決断する。「眼精疲労」云々が表向きの理由と聞くが、日々移り変わる生モノと対話できる寿司の世界に、本当の“生き甲斐”と“旨味”を見つけたらしい。

だいぶ前から、「大谷翔平はいずれドジャースのユニフォームを着るよ」と予言していたらしく、お店の名前もかつての『SPOON(スプーン)』から『SUSHI KAPPO SHOHEI(寿司割烹 翔平)』に変え、ドジャースタジアムの目と鼻の先に青の暖簾をかけている。

その先見の目は、“21世紀の諸葛亮孔明”と囃し立てられ、寿司屋を訪れる人はもちろん、繁盛をやっかむ人から「寿司ネタ」以上の「話のネタ」にされているとのこと。したたかさとは何かを突き詰めた男の決断に、スタンディングオベーションを送りたい。

さて、前置きが長くなりました。私たちは、そんな匙翔平さんに心底「憧れ」を抱き、片方脱ぎ捨てた広告デザインの分野における“匙イズム”を受け継ごうと心に決め、会社名を『匙デザインカンパニー』としました。

遠くLAでひたすらに寿司を握る匙さんへの敬意と感謝の思いを込めて、私たちは、あなたが元来得意としていた「自由な発想」で「温かみのある」広告デザインを、ご機嫌斜めな世の中へ送り続けます。

この物語はすべてフィクションです。調子に乗った架空の話です。最後までお読みいただき恐悦至極に存じます。

会社名
『匙デザインカンパニー』の由来は
  • 漫才コンビみたいな「漢字とカタカナ」の組み合わせがいいね
  • どんな「サービス」を提供する会社か分かったほうがいいね
  • 3人だけなのに「カンパニー」と言いはるのも馬鹿げていていいね
  • 愛称が「匙さん」や「サジカンさん」になるのもいいね

という創設メンバー3人の会話から生まれた、意味よりも勢い重視の社名です。登場人物の「匙翔平さん」は存在しませんので、ネット検索などはお控えください。

文:橋田 耕介 | 
認:飯澤 雄司・日髙 政博